2013年9月30日月曜日

草の根無償プロジェクト~聖ガブリエル病院の病棟増築完成式へ

9月18日、キンシャサの草の根無償案件に携わる日本人女性職員の案内で、草の根無償資金により計画、実施されたプロジェクトの完成式に出席した。

聖ガブリエル病院の建物の屋根屋根(新病棟二階通路から望む)


そのプロジェクトは、「聖ガブリエル病院改修・拡張計画」とよばれるもので、平成24年度の”草の根・人間の安全保障無償資金協力”からの援助金で計画、実施されたものだ。

この”草の根無償”は日本の政府開発援助(ODA)のひとつなのだが、担当者から説明を受けて、他のODAと決定的に違う点があることを知った。
一般市民グループから要請書が提出され、その要請書を元に日本の草の根無償の現地担当者が当事者と面談し、現場に出向き、あらゆる方向から検討した上で実施が決定し資金援助額が決まると、案件実施過程は要請元の団体グループ自身の手に委ねられる、というのだ。
もちろん、援助資金が提供されるのだから、日本の草の根無償担当者は、現地に出向き、計画実施状況を見続け、かれらに助言を与えたりしながら計画過程を把握し続けるのだそうだ。

要請してきた現地の人たち自身の手で計画が実施される、ということの意義には深いものを感じる。と同時に、草の根無償の担当者の苦労に対しても、頭が下がる思いだった。
草の根無償担当の女性職員は、キンシャサに赴任して1年経つか経たないかで、キンシャサじゅうのあらゆる村落に訪ね入ったということを話してくれた。


さて、その聖ガブリエル病院は、2万7千人の住民を抱えるレンバ保健地区に建つ唯一の総合病院だと聞く。そこには、15人の医師と89人の看護士が働き、年間3万人の外来患者が訪れるのだそうだ。
キンシャサ中心地から空港方面に向かい、途中から脇道に逸れてしばらくいったところにある現地の人々の住む地区にある病院だ。
診察棟、入院棟などが狭い敷地内に点在していた。

完成式当日、入院病棟に入っていくと、あちこちで生まれたばかりの赤ちゃんに出会った。
新しい命誕生に明るいパワーがみなぎる病室だ。
もちろん、母子同室、というか、母子同ベッド!

4人目の出産とか。堂々とした母親で赤ちゃんも安心!

双子の赤ちゃんにも会う。
この病院の分娩費用は20米ドルという。
それを高いと感じるキンシャサ市民も多いだろう。
安定した経済基盤を持つ母親は表情も明るく、新生児の肌もつややかで元気だ。
聖ガブリエル病院では、一日平均3人の赤ちゃんが誕生するのだそうだ。

草の根無償資金で増築された二階建て新病棟にも行ってみる。

聖ガブリエル病院の新病棟の室内

二階部分が数室ほどの入院病棟になっている。
建物と設備のベッドまでが草の根無償の援助金でまかなわれたのだそうだが、蚊帳については病院側で準備されたと聞いた。
とても明るい、清潔な病室だ。

ある病室に入ると、クロスの上にイエスさま像とロザリオと聖書が置かれたサイドテーブルが目に留まった。わたしと同年代くらいの、小ざっぱりした身なりの女性の入院患者だった。かのじょが早く快復しますように。


さあ完成式が始まった。

聖ガブリエル病院・草の根無償資金プロジェクト完成式会場(新病棟二階から望む)

看護士たちや病院勤務の女性たちはこの日のためにお揃いの布地でドレスを作って身に着けている。入院患者もいるし、さきほどからお産が始まったと聞いたのに、病院敷地内は、結構なボリュームでリンガラ音楽が鳴り響いているのには違和感を覚えるが、コンゴ流儀なのだろう。

聖ガブリエル病院・草の根無償資金プロジェクト完成式会場と新病棟(正面二階建て建物)


オレンジ色のテントが張られた来賓席に、十字架を首に掛けたベルギー人(?)神父2人とアフリカ人神父がいた。
かれらは、キンシャサ市内にある聖ジョセフ職業訓練学校の教師なのだそうだ。
聖ジョセフ職業訓練学校は、平成23年度草の根無償資金を受けて新校舎が増築され、受け入れ生徒数が増えたのだそうだ。
左官、木工、溶接、電気工の4コースを持ち、建設技術者養成を目的とするこの学校の生徒と教師が実習を兼ねて、今度はやはり同じ日本の草の根無償資金を得た聖ガブリエル病院の病棟増築工事を請け負ったということだった。
草の根無償資金で広がる人的繋がりを感じて、思わずホットするものを感じた。


聖ガブリエル病院や聖ジョセフ職業訓練学校が受けた草の根無償協力の正式名称は、
「草の根・人間の安全保障無償資金協力」と言うのだそうだ。

外務省の政府開発援助(ODA)のHPによると、平成24年度(2012年)に実施された計画はアフリカ地域だけで203件にも上るのだそうだ。
アフリカ地域54カ国のうち39カ国が草の根無償資金を得て何らかの計画が進められている。
エチオピアの18件、タンザニアの14件、ウガンダの13件、南アフリカ共和国の11件と続く。
コンゴ民主共和国は同年度5件が挙がっている。
コンゴ民主共和国内では年にほぼ5,6件の案件が実施されるのだそうだ。

どんな案件が実施されているのかを見ると(平成24年度)、教育分野の97件が突出し、続いて医療保健分野の53件、給水・井戸21件、職業訓練・保護ケアセンター建設13件、農水分野11件などがある。
目に留まったものとして、ジンバブエ、コンゴ民主共和国カタンガ州、モーリタニアの3件の地雷除去計画というのがあった。


安倍首相が先日、国連本部で演説した内容には、女性の保健医療、紛争下での権利保護などの分野に3年間で30億米ドル超(3000億円)の政府開発援助ODAを供与することが盛られていると新聞記事で読んだ。
平成24年度の草の根無償の案件内容を見ても、安倍首相が挙げた分野の案件が多く挙がっていることに気付く。

もちろん、政府開発援助ODAは、草の根無償援助だけではない。
色んな形態の開発援助があり、その中のひとつとして草の根無償援助というものがある、ということにも目を向けられたらなと思った今回の訪問であった。


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