我が家にヨウムのぽんちゃんが来て一ヶ月半が経った。
ぽんちゃんは毎日、パームヤシの実10粒と殻付きピーナッツ10個と乾燥とうもろこしの粒20粒ほどを食べて、水を飲んで少しずつ大きくなり、体毛が当初は黒っぽいグレーだったのが少しずつ明るいグレーになって、幼鳥から抜け出ているようだ。
パームヤシの実は、ヨウムの尻尾の毛の赤い色をきれいに保つ役目をしているのだそうだ。
パームヤシはゴルフ場内に木があるので、キャディーに頼んで週に二回くらい集めてもらっている。
下の写真のパームヤシの量で5、600フランくらい。
日本で飼うとこんな見事な自然のパームヤシなんて入手できないだろう。
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パームヤシの実
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殻付きピーナッツ |
ピーナッツは、殻付きの生のものでないと食べない。
ピーナッツの殻を大きく突き出た上くちばしと舌で挟んで、カチン!と勢い良く割って中身だけ上手に食べる。
乾燥とうもろこしの粒も、上くちばしと舌でカリコリと音を立てて噛み砕いて食べている。
ゴルフ場のキャディーが、ヨウムが食べる果物だと言って持ってきた果物をあげても一口二口食べただけだったし、雑穀もパンも食べない。
止まり木の枝の皮を剥いで食べてはいるが、ぽんちゃんの常食は、パームヤシの実、殻付きピーナッツの中身、乾燥とうもろこしの粒、そして水だ。
ぽんちゃんは一時期、ずいぶんとわたしたちに懐いてきたかなと思える時期もあった。
ところが最近、なんとなくストレスを溜め込んでいるように思える行動が目立ってきた。
わたしたちが鳥小屋に顔を近づけて話しかけると、ガアガアと口を大きく開けて威嚇するように鳴くのだ。時に、口を大きく開けすぎて、ガアーーー、っと声を限りに鳴くので、オエーっと喉を詰まらせることもある。くちばしの付根が張り裂けるのではないか、というくらいに口を大きく開けて鳴く。そんなに鳴かなくてもいいんだよと話しかけるけど、分かってないんだろうなあ。
小屋の鉄枠を拭こうと思って触ってもギャー!
洗濯物の黒っぽいものを小屋の上に落としたときなんか、びっくり仰天したぽんちゃんは、ギョエー!!!、とこちらが驚くほどの奇声を張り上げた。
怖がりだった幼い頃の息子の姿と重なって思わず笑ってしまう。
朝未明、野鳥の鳴き声(ヨウムの仲間の声なのか!)に呼応してか、ぽんちゃんも高音を張り上げて鳴き続けている。
さらに、籠の側面にくちばしと二本足でしがみついて、羽を大きく広げてばさばさと羽ばたいている。
羽ばたくと白い粉のような小さなものが辺りに飛び散っている。
時々、スプレー容器に水を入れてぽんちゃんに水浴び代わりにかけてあげるのだが、そのときももの凄い鳴き声を上げる。
毎日でも水をかけてあげることは大切なことのようだが、あまりに大騒ぎするから躊躇ってしまう。
キンシャサでやっと探し当てて買った中国製のスプレー容器は、噴霧スプレーではなくて水鉄砲様の、水の塊で飛び出るスプレーだった。
ぽんちゃんには恐怖に感じるのかも。
もしかしたら、鳥小屋が小さくなったのかもしれない、と大きめの鳥小屋を探していたら、夫の工事現場で猿を飼おうとして作ったという鉄筋製の空の小屋があったといって夫がもらってきた。
鉄筋製だからひとりでは抱えきれないほどの相当な重量だが、大きさとしては充分だった。
そうして、ぽんちゃんはがっしり重くて大きい小屋に移った。
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鉄筋を利用して作られた小屋
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鉄格子の間から ~ 止まり木の皮が食べられて剥がれている |
止まり木は、体操女子の段違い平行棒のように二段で取り付けた。
ぽんちゃんはいつも高いほうの止まり木にいて、餌を食べる時だけ下段の止まり木に移ってそこから顔をグーッと下方に下げて床に置かれた餌を上くちばしと舌で挟んで取って食べている。
ほとんど床に降りないし、また物音がしたり、わたしたちがベランダに出ると、慌てて上段の止まり木によじ登る。
そんなに慌てて餌をポトンと落としてまで下段から上段に移らなくてもいいんだよ、わたしたちは何にもしないよ、と言っても慌ててヨタヨタと移動する。
餌を食べた後、パームヤシの実をくちばしにたくさんくっつけて、♪おべんと付けてどこ行くの~♪状態だが、くちばしを止まり木にこすり付けて上手にくちばしに付着した実をこさぎ取っている。
つくづく、ぽんちゃんは我が家に来る前はどこの家で飼われていたのでもない、野鳥だったのだと痛感する。
言葉も発しないし、相変わらずわたしたちの顔が近づくとぎゃあぎゃあと威嚇する鳴き方をする。
小屋は広くなったのに。
居心地が良くないのかな。
どうしてだろう。
かれに遊ぶためのおもちゃを買ってあげようと思って、スーパーのペットコーナーで”小鳥用玩具”と英語で書かれたベル付きミラーを買ってきて上から吊るしてみた。
ぽんちゃんは自分の顔を見たことがないのだもの。
興味津々で、しばらくはミラーの中の自分に見入っていた。
そして揺れるとチリンチリンと鳴るベルの音にも耳を澄ましていた。
でも。
翌朝には、2個のベルもミラーもチェーンの一つ一つもすべて見事バランバラン!に分解されて床に飛び散っていた。
あーあ。
家政婦は、マダムたちが四六時中話しかけてやらないからだと言った。
そこで、わたしは先週から毎日30分くらいソプラニーノ(小型リコーダー。高音が出て、小鳥のさえずりの練習用リコーダーだと聞く。)をぽんちゃんに聴かせることにした。
夕焼け小焼け、赤とんぼ、七夕、みかんの咲く丘、とんぼのめがね、雨、ゆりかご、ぞうさん、ちょうちょ、木の葉のお舟、海、朧月夜、夏の思い出、里の秋、虫の声、旅情、富士山、こいのぼり、雪、村の鍛冶屋、古時計・・・思いつく限りのメロディーを演奏する。
ぽんちゃんは静かに聴いている。
高音に特に反応して、目を閉じてうっとりと・・かどうか知らないが、半目状態で確かに気持ちよさそうに聴き入っている。
そんな可愛らしい様子にわたしはプッ、と噴出しそうになる。
ソプラニーノの音色は確かにきれいだ。
わたしだって、キンシャサの夕焼け空に響く(?)日本の童謡や唱歌についしんみりとなって、ぐっとこみ上げるものを感じたりもする。
ぽんちゃんの心に響いて穏やかになってくれたらいいなと思う。
独りで餌を食べていて、わたしの気配にびっくりして餌を落として、慌てまくって上段の止まり木によじ登るぽんちゃんの様子に、ああ、まだまだこの子はわたしたちに心を開いていないのだと痛感する。
夫は、身を守るための野鳥の習性なのだからそう簡単には懐かないだろうと言う。
「パンパカパ~ン♪、パン、パカ、パンパカパ~ン♪ 今週のハイライト!!
ぽんちゃんがついに話すようになりました!!!」
こんなアナウンスができる日が来るといいな。