ボノボ救済施設 ”LOLA ya BONOBO” 入り口付近で |
コンゴでは、風景写真を撮ることはなかなか難しい。
勝手に写真を撮るとコンゴの人たちはとてもいやがる。
ましてや、人物となるとなおさらだ。
人にカメラを向けただけで、大声を張り上げ、カメラを取り上げんばかりの勢いで詰め寄ってくる。
だから、なかなか取れなかった・・・マダムたちが頭に物を載せて運ぶアクロバットな姿を。
これらの写真はキンシャサ生活1年の間に撮りためたものだ。
アフリカのマダムたちは何でも頭に載せて運ぶ。
だからだろうなあ、アフリカ女性たちは皆、胸を張ってスックと歩き、姿勢がとても良いのだ。
中央アフリカのバンギにいた頃、直径7、80cmもあろうかと思われる金タライに新鮮な野菜や果物を入れて頭に載せて4階の我が家まで売りに来る、陽気なマダムがいた。
我が家の玄関ベルを鳴らしわたしがいるのを確かめ、ゆっくり座ってから門番のお兄さんの手を借りて大きな金タライを下ろすのだ。
そして帰るときも、門番を大声で呼んで、よいこらしょ!、っと金タライを頭に載せるのを手伝ってもらい、それからゆっくり立ち上がって帰ってゆくのだった。
小柄なマダムながら、これぞマーケット・マミー!!、と感服するようなプロ根性の持ち主だったことを懐かしく思い出す。
キンシャサでいちばん驚嘆し、目を見開いたのは、生卵を何段も重ねたものを頭に載せ、背中に赤ちゃんを負ぶい、雨降るぬかるみ道を傘を差して平然と歩くマダムを見たときだった。
何かの拍子に頭上の卵を落としたら大損害だろうになあ、なのにあんなに平然と歩いてまあ!!、と唖然としたものだ。
さて。
上の写真は、プラスティックのタライに洗濯物を載せて、キンシャサ郊外にあるボノボ救援施設近くを通り過ぎるマダムたちを撮ったものだ。
近くに小さな川があって、そこが洗濯場になっていたのだ。
彼女たちはお互いに見つめ合って談笑しながら余裕で歩いていた!
そんなものくらい手に提げたら?、というものまで頭に載せている母親 |
アフリカの女性は、子どもを負ぶうとき、子どもの脚を開いてしっかり母親の両サイドの腰骨のところに足首を出し、広げたアフリカの布地で子どものお尻を包み込むようにして子どもの頭だけ出して腰辺りに巻くようにして負んぶする。そして、子どもを負んぶしても前かがみにならないから、頭に物を載せられるのだ。
その負ぶいかたは、子どもの股関節にとても理想的な型なのだと日本の助産婦さんから聞いたことがある。
我が家の家政婦も彼女の仕事の一つであるバナナ売りのときは、頭にバナナを載せて運ぶのだと言う。
落としたりしないの?、と訊くと絶対落とさない!、ときっぱりと言う。
小さいときから頭に載せて運んでいたからね,と。
それに、細長い布地をくるくる丸めてまず頭に載せて平らにクッション材みたいに敷いてから荷物を載せるのよ、と実演してくれた。
軽いものは手に下げるけど、重い荷物を下げていたら腕が痛くなるでしょう、とも言う。
そして、もしわたしたちの国に平らな道があったなら、シャリオ(手押し車)を使ったでしょうけど、と。
以前、川魚が揚がって美味しい現地料理を食べさせてくれる食堂がずらっと立ち並ぶKinkoleeという町の”道端食堂”で昼食を摂っていたときのことだ。
テーブルに着いていたらいろいろな物売りが寄ってきた。
8月の夏休みだったせいか、多くの子どもたちも頭に売り物を載せて売り歩いていた。
野菜を売り歩く少年 |
マボケ(左)や揚げ菓子(右)を売り歩く少女たち |
葉っぱで包んだ蒸し物を売り歩く少女 |
なるほど。
小さいときから、母親の見よう見まねで頭に載せて運ぶことを覚えてゆくのだなあ。
小さい子の中には、頭に載せて物を運ぶ少年も見かけたが、大人の男性が頭に物を載せて運ぶ姿は全く見かけない。
20年近く前のバンギでは、正面がガラスになった四角い木のケース箱に揚げパンを入れて、まるで店のショーケースをそのまんま頭に載せて売り歩いているような(もちろん小型ショーケースだけど・・)若い男性をよく見かけたものだが、キンシャサでは、頭に物を載せて歩く男性は皆無だ。
男性は良いカッコしい、なのかなあ。
でも。
ポワ・ルー産業道路(夫が携わるプロジェクトの道路)で、ベッドのマットレスを山積みしてリヤカーを重そうに引いて行く、根性の二人組男性は見かけたが・・・。
工事中のポワ・ルー産業道路を通過するリヤカー |