2012年7月12日木曜日

コンゴに生きる人たち

我が家ダイニングのベランダからの景色

今日もキンシャサは朝からどんよりと重い雲で空は覆われ、太陽は見えない。
半袖、素足ではちょっと寒い。靴下を履いた。

我が家の温度計は、やっぱり25℃を指している。この温度計、いつも25℃を指しているような気がするけど、壊れてないかと疑ってしまう。(温度計にまで疑心暗鬼になっている!)

ただ今午前11:15。家政婦のフロランスはまだ現れない。
通常は9時始まりなのに。
彼女は、一昨日、頭痛がするから病院に行ってから出勤する、と言って12時近くに我が家到着。
そして、昨日。明日は薬を貰いに行ってから来ます、と言って帰って行った。
何日か前に、頭を強打して以来、頭痛がするのだ、と言う。
午後2時に仕事が終わってから薬局に行けばいいのに。
そう言ったら、午後からではだめなのだと言う。悔しいことに、その「ダメ」な理由が聞き取れない。

人を使う、ということは骨が折れる。

本当にストレスが溜まる国だ。


国連職員でこの国が嫌いだ、と言い捨ててよその国に行ってしまった人がいた。
この国の人を絶対信じないことにしている、どんなに良い人だと思っても裏切られてきたから、もう傷つきたくないから、この国の人を信じない。
その言葉を反すう胃のごとく噛み砕いてみる。

IWC(国際女性クラブ)の大部分のマダムたちが、この国は住みにくい、と不平を口にする。
クラブの年度末の最後のニュースレターの代表者の挨拶文の中に、
”Kinshasa is an incredible city.”
という箇所を見つけた。

”incredible” ・・・ 辞書を引くと、「信じられない、信用できない」または、「途方もない、並外れた、異常な」とある。 
最近、キンシャサにあった韓国レストランが店を閉じた。この地で店を維持することに疲れてしまった、と言っていたそうだ。
わたしのフランス語のコンゴ人の先生も、不動産のことで裏切られたらしく、涙ぐみ激昂して、この国の人たちは大嫌いだ、だから、わたしは将来いつかよその国で暮らす!と、言っていた。


確かになあ。
家の修理ひとつとっても、何度言っても来てくれない。
本当に修理人なのかと疑うほど技術が下手だし、ゴムを巻いたりセメントで埋めたりして微妙な折衷策(?)で平然と修理したと言いのける。
そして、屁理屈をこねるのが上手だ。

ある時、台所の水道の蛇口から水がポタポタ落ちて来るので、修理人を呼び、水道の蛇口ゴムパッキンが磨耗しているから新しいのに取り替える必要がある、今から買って来るから水道蛇口代金としてこれこれの金額が欲しいと言う。
わたしが、この修理代はアパートの持ち主が支払うべきものだろう、と主張すると、修理人も我が家の家政婦も二人して、壊れたのを見つけたあなたが支払うべきだと言ってきた。
何言ってるの!!日本では、アパートの持ち主が修理代を払うのだ、とわたしが呆れて言い返すと、ここはコンゴだ、見つけた人が修理代を払うのだ、と屁理屈を通された!

ここに引っ越してまもなく、部屋の害虫駆除に来た、と言って、殺虫剤入り(と思われた)の立派なバキュームを背負って部屋に入り込み、あちこちに殺虫剤をばら撒いてまわり、このまま明朝まで放置してください、そして後は軽く拭いてください、部屋中の害虫が駆除されました!と言って何十ドルだか百ドルだかを取って帰っていったが、ちっとも殺虫剤の臭いがしない。殺虫剤とおぼしき液体は、何の臭いも発することなく、シミにもならずきれいさっぱり蒸発してしまった。
ただの水だったのだ。

誰かが、この国の人は、中国人より屁理屈を通すのにかけては一枚上手(うわて)だと言っていた。どんなに間違った主義主張も堂々と立ち向かって自分の主張を通してしまうのだ。

この国で仕事を持つ外国人はさぞストレスの溜まることだろう、と思う。
中央アフリカにいる時、無償援助の道路工事に従事していた日本人が、現地の労働者を使っていて、200人いたらその中に信頼できる者が1人だけ見つかる、と言っていたそうだが、果たしてこの国にも当てはまるのだろうか。


この国に1997年まで32年間もの間、君臨してコンゴの国益は我が利益と言わんばかりに私腹を肥やし続け、コンゴの国と国民生活を破壊し尽した暴君、モブツ元大統領の下で、それでも生きていかねばならなかったコンゴの人たちを思えば、その時代を生き抜いて来た”したたかさ”、というのか”生きる知恵”を身にまとった経緯を非常に納得できる。
井上信一著「モブツ・セセ・セコ物語」(新風舎・絶版)を読んで、心底、コンゴ国民の人格形成の根本を見せつけられた思いだった。


”モブツ・セセ・セコ物語”

”・・・本来豊かであるべきコンゴの農業、林業、漁業、そして、ついには鉱業までが疲弊し、危機的状況に落ち込んでしまいました。その上国民にとっての最大の悲劇は、モブツが自らとその一族のために国のお金を湯水のごとく使い、この豊かな国を破産状態にしたことです。モブツはある外国人記者とのインタビューの中で、自分が世界第二の資産家であると言ってはばかりませんでした。
国民のために使われるべき予算は手荒く減らされ、教育、保健衛生、インフラの整備など行政のあらゆる面にそのしわ寄せがきました。独裁政治の下で、国民は苦しい惨めな生活を強いられ、自由に自分の意見を述べることが出来ませんでした。モブツ体制の下で命を奪われた人の数はどのくらいに上るのかわかりません。・・・”

この本の序章からの抜粋だが、ここの箇所を読んだだけでも虐げられた生活を30数年も(その前はベルギーの植民地として80年も!)送らざるを得なかったコンゴ国民の様子が理解できるかと思う。

この「モブツ・セセ・セコ物語」について書きたいことが山ほど(!)あるがまたの機会に。
隣に住む日本の医師が、この本は隠れた名著だ、と言われていたが本当に素晴らしい本だと思う。

この古くて修理ばかりしている、自家発電機の備わっていないアパートから抜け出したい一心で、会社の規定内の家賃の新築アパートを見つけたのに、大家(このマダム、悪名高きモブツの妾だったという女性!)の手下(と言葉まで悪くなってしまった!)が、
「入居時に交わした誓約書に、”1年間は居住のこと”という項目がある。あなたたちは1年住んでいないのだから、いくら3ヶ月前に引越しを言ってきても入居時に払った3か月分の保証金は返金できない。」
と言ってきた。
或いは、「あなたたちが出て行こうとしている部屋を誰かに紹介してくれるなら話はまた別だが。」とも。

こんな水も出ない、電気もない、修理だらけ、継ぎ接ぎだらけの部屋を誰に紹介できるって言うのよ!!
・・・と面と向かって言いたいところだが、そんなフランス語力を持ち合わせていない、平和的な日本から来たわが身には、できない相談だ。悔しいけど。

シャワーを使っていてもいつ水が止まるか冷や冷やものだし、お客さんを迎える日は、食事の準備中にいつ電気がストップするかと緊張するし。

毎晩のお酒が進むようになってきた。
(暗い話、愚痴ばかりでお許しを。)

4 件のコメント:

  1. ご無沙汰しています。直子です。主人に教えてもらったので、ブログを読ませていただきました。
    アフリカを楽しんでいらっしゃる中でも、色々とありますよね!
    アフリカで生活するのは、日本ではしない苦労があるのわかります。人を使う、水がでない、電気がとまるストレスを私も経験しましたよ~。お酒でも(ほどほどに)飲んで発散させてください!!

    それと、大変遅くなりましたが、お孫さんの誕生おめでとうございます♪お誕生日が私と一緒でびっくりです。

    また、たまにのぞきにきます。

    返信削除
  2. 直子さん、コメントをありがとうございます。
    直子さんはアフリカ4,5カ国の生活を経験されているのだから、大先輩ですね。

    日本人のものさしで測ったらだめだ、とは思うものの、ストレスたまります。
    夫婦二人だから、夜はお酒で楽しめるし、日曜日はゴルフに集中できるメリットはあります。
    しっかりどんぐり眼でコンゴを観たいと思っています。

    直子さんと孫娘と誕生日が一緒なんですね♪なんかすごくうれしいです♪

    返信削除
    返信
    1. いえいえ、大先輩はHIROさんです。
      4年も中アで子育てをされたのですから。

      それにしても、こんなすごい屁理屈は私も経験がありません。
      (あったとしても、聞き取れてはいない・・)
      害虫駆除のことにしても、ひどすぎですね。
      コンゴの人は手強そう。
      いつもの前向きなHIROさんでがんばってくださいね☆

      削除
  3. 直子さん、ありがとう♪
    勇気百倍♪
    なんとか言いながら、わたしの周りにいるコンゴの人たちに助けられているのだなあ、と思っています。狡賢い人は超いやだけど、我が家や夫の事務所で働くコンゴの人たちには感謝しています♪
    中アには丸っと3年いましたが、お手伝いのフランソワおじさん、運転手のポール、仕立て屋のエドモンドおじさんが懐かしいです。

    返信削除