2012年7月3日火曜日

キンシャサの家具屋事情



最近、家具探しを始めた。
キンシャサの街を車で通っていると、家具屋を結構見かける。

路面店として、”HABITA”という店が市内に3店舗くらいある。フランスのブランドだと記憶している。ずいぶん前に東京でも、西武池袋店にアビタの店舗が入っていた。その後、デンマークのインテリアショップに変わったが。
他に、”American Eagle”という4階建て(?)の日曜大工道具店の最上階に家具のフロアがあるのも知っている。まさに日本のデパートの家具コーナーのような雰囲気ではあるが、ここには派手な御殿に置くような家具ばかりが並んでいる。


そして、キンシャサの外れ、道路の両サイドに家具職人の店が軒を連ねる野外家具店街がある。砂地の上で、木材や籐素材で家具を制作し、そこで売っているのだ。
粗悪な木材でニスをたっぷり塗りたくった家具。椅子に座ると木材のささくれが皮膚に突き刺さりそうな粗末な加工で、ニスでべたべたしている感じがする。砂地の上で作業するから、家具の脚元がすでに土ぼこりとニスで変色して汚れている。
ある人の話では、道路端で売られる家具は、虫に食われているから避けるべきだ、と言う。
さもありなん。

現在居住中の我が家のドレッサーとソファに虫が湧いた。
ドレッサーのほうは、殺虫剤を撒けども撒けども、未だに木材を蝕み続ける虫が奥深くに入り込み巣食ったままだ。これがベッドでなくてよかったと真剣に思う。
ここの家具は、確かに他の家具店より”0”が一つ少ないが、食指は全く動かない。
いくらテンポラリーなキンシャサ暮らしでも、住環境はある程度しっかり整えたい。

そういった意味で、キンシャサ駐在生活を終え、本国に帰国する人たちの中古品セール情報は貴重だ。IWC(国際女性クラブ)のNews Letter や、アメリカ大使館発行のCongo Bongo,イギリス大使館発行のNews Letterに掲載される情報は見逃せない。

ここの野外店の革張りや布張りのソファの製造過程を見て、びっくりした。
外観は、どこぞの成金お宅のリビングに鎮座する豪華御殿風ソファなのだが、中身は木枠に使用済みプラスティック梱包財を切って貼り付け、その上に劣化しかけで変色したウレタンスポンジをホッチキスで留めていき、さらにスポンジを重ねてソファとして形成されていた。
見てくれだけカッコイイ!、というのはこの国の得意技だ。


こことは真反対のシンプルかつ作りのしっかりした家具制作工場を教えてもらった。飛行場近くにある、”Scan Form”だ。名前の通り、北欧家具のオーダー工場だ。
展示ルームは、もはやキンシャサではない。
銀座マツヤの北欧家具コーナーと並べても遜色はない。
よく見ると仕上げがイマイチだったりもするが、シンプルなデザインで、木材の材質も良く、申し分のない家具だ。ただ如何せん高い。
4人がけの丸いダイニングテーブルと、デンマークのデザイナーズ家具に似た座位部分がロープで編まれた椅子が4脚で2190USドル。シンプルな無地布張りソファ3点セットが3320USドル。クイーンサイズベッドが2520USドル。サイドボードも上品でシンプルな仕上げだ。
注文して納品まで45日かかるそうだ。
いいなあ、ここの家具!夢心地になるが、1,2年の滞在のためにこんな高価な家具は買えないことは承知している。

ここよりグンと質は落ちるが、道路端家具職人の家具よりはマシなオーダー家具屋として、”Artisanat et Developement”がある。材質の割りに高価な印象だ。
1週間ちょっと前に、この店で、アンティーブで購入した油絵とクバ族の織物のために木製額をそれぞれ注文した。
明日あたり受け取りに行こうと思うが、果たしてどんな風に仕上がっただろう。
木製額のオーダー価格は一つ80USドルだと言われ、交渉して2つで150USドルになった。

さて、いちばん最初の写真は、夫が、「キンシャサにイケアができた!キンシャサのイケアだから、キケアだ!」とか平然と信じがたいことを言うので、百聞は一見にしかず!いつもハッタリでモノを言う夫の説明に半信半疑でついて行ったら、こんな家具屋が夫たちの道路工事現場近くにオープンしていた。
市内から空港へ向かう平行して走る2本の道路、ポアルー通りとリミテ通り間をあばら骨のように何本も通る道路のうち、12番通りに”Scan Form”のショールームと工場が、14番通りに”KITEA "の店舗がある。
KITEAは、日本の”ニトリ”のような感じか。組み立て家具とリビング&ガーデニング&キッチン用品が置かれている。
店の責任者らしい男性がいたので尋ねたら、モロッコからの家具屋で4月にオープンしたのだそうだ。店の名刺がほしいと言ったらまだ準備されていないとのこと。
ニトリ製品には及ばずちゃちな製造のイージー組み立て家具の割りに高い。価格的には”Artisanat et Developement”と同じくらいか。

よくよく店の名前を見上げたら、" KITEA"だった。
スウェーデンの"IKEA"とは全く無関係で、モロッコ国内で展開している家具屋だということだった。

”KITEA"ってなんだか、「来てや」みたいだなあ、と思ってもう一度見上げると、店名の下にフランス語で”Bienvenue”・・・(いらっしゃいませ)、「よく来てくれました」、と書かれていて、何だか愉快になる。
モロッコ滞在経験者に聞くと、モロッコ国内のKITEAは、IKEAのようなシンプルな家具を扱う店だそうだ。彼女は、きっとコンゴの人たちのニーズに合わせて豪華装飾の家具を置いているのだろう、と言っていた。


街の中心にある、”UAC"という大きな店構えの家具屋もあるが、わたしは店内にまだ入ったことがない。
IWCの今年度版”Newcomer's Guide to Kinshasa”の冊子には、キンシャサ市内に計14店の”Furniture shops”が掲載されている。すべての家具屋をのぞいて見たいと思っている。


これだけの家具屋が存在し、多種類の家具がキンシャサにそろっているのも、この国に港があり、港からコンゴ河を遡ってマタディー(Matadi)まで大型船が入港できるからだと思う。(マタディー~キンシャサ間は今では陸路で運ばれるということだ。)
そして、キンシャサに空路で入る路線が多く飛んでいるということも挙げられる。

ケニア・ナイロビ便、エチオピア・アジスアベバ便、そして南ア・ヨハネスブルク便は毎日就航し、パリ便、ブリュッセル便は週4,5便、モロッコ・カサブランカ便やカメルーン・ドアラ便もあるそうだ。

キンシャサではお金を出せば色々なものが入手可能なのだなあ、と家具ひとつ取ってみても感じることだ。
この国で一民間企業の駐在員家族として限られた期間を暮らすには、上を見ることなく、下を見ることなく、どこかで折り合いをつけて、アイディアと発想の転換で乗り切ることが”鍵”なのだろう。

8 件のコメント:

  1. 家具探しからいろんなことが見えてくるんですねぇ。キンシャサに行ったら、私も「来てや」「いらっしゃいませ~」に行ってみたいですw アイデアと発想の転換で使い心地の良いドレッサーとソファが見つかりますように!
    発想の転換と言えば、昨日のNHK「クローズアップ現代」で「TED」という毎年アメリカで、学術、エンターテインメント、デザインなど、様々な分野のキーパーソンが集まり、講演を行う「TED Conference」を紹介していました。講演の様子はネット上で公開されていて、一つの講演は12分くらいです。最近東京でも発表の予選(?)があったらしく、経営コンサルタントの男性が、企業の幹部にフィンガーペインティングで仕事の理想を表現してもらうことの効果をプレゼンしているところを取材していました。
    私には寛子さんがそこで「一民間企業の駐在員妻から見たコンゴと先進国~アイデアと発想の転換があればみんなが幸せに」というプレゼンをしている姿が見えましたよ。ぜひ考えてみてください。
    公開されている講演には、幻想的なダンスや動物の話とか、これから私も少しずつ見て行こうと思っています。「TED」と入力するとネットですぐに見つかると思います。トライしてみてはいかがでしょう。

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  2. チェロ子さん、興味深い情報をありがとうございます。”TED”について検索してみます!
    フィンガーペインティングには私も思い出があります。私の幼稚園時代、先生が広い部屋の床に大きな模造紙を置いて、こどもたちの紙の上にどてっ、どてっと色糊(?)を置いて行き、頻繁にフィンガーペイントをさせてくれました。「海を描いてみよう!」と先生が言った日のことを鮮明に覚えています。いつも私は指で描く世界に入り込んでいました。
    色々な”視点”を持つ、ということは豊かに生きてゆくキイポイントなのね!
    一緒にキンシャサで家具屋巡りをしましょう♪♪

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  3. 初めまして。
    9月よりキンシャサに転勤になるためコンゴ民主共和国について調べていたらこちらにたどりつきました。
    コンゴ民主共和国についての文献が少ないため非常に参考になります。
    これからもブログの更新を楽しみにしております。

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  4. Ichinari様
    コメントをありがとうございます。9月にキンシャサにいらっしゃるのですね。ご家族でいらっしゃいますか。
    楽しみにしています。
    こちらはただ今とてもよい季節で、朝から鳥のさえずりを聴いてひんやりとした空気の中で一日が始まります。
    10月初旬まで乾季だと聞きます。
    なにかお役に立てることがありましたらお知らせください。

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    1. hiro様
      ご丁寧にありがとうございます。
      東京の小さな民間企業のサラリーマンですがコンゴ民主共和国勤務の辞令が出ました。
      特に一緒に行く家族もいないので(独身ですので)単身で赴任予定です。
      普通の旅行などでは行くことが難しい場所なので貴重な経験をさせてもらえる会社に感謝したいと思います。
      キンシャサ在住の日本人は少ないと聞いておりますのでお会いする機会がありましたらよろしくお願いいたします。

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  5. Ichinari様

    キンシャサの日本人もずいぶん増えたように思います。とは言っても、大使館員、JICA職員、ODA関連の方々ですが。日本の商社もずいぶん前に引き上げたまま戻ってきていません。
    きっとキンシャサでお会いできるはずです。楽しみにしています。

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  6. Hiroさま、

    いつも楽しい記事をありがとうございます。
    キンシャサ~ルブンバシですが、コンゴ河を遡る船はキサンガニまででしょう。昔は途中で支流にはいりイレボでSNCC(国鉄)に乗り換えてルブンバシという交通があったようですが、今の国鉄では不可能になってしまいました。
    国道1号線も地図上にはありませうが、殆どキンシャサ~ルブンバシのトラックなどは走っていません。敢えて走破すれば3週間以上かけることになります。わずか2000kmしかないのに。従って、ルブンバシに来る物資はダルエスサラム(同じく2000kmですが3日でつきます)または南アから入ってきます。輸出はその逆です。アンゴラの鉄道が回復すれば、アンゴラの港から欧州と輸出入交易が70年代のようにはじまります。

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    1. TANABE様
      ご指摘をありがとうございました!
      わたしのブログ中に、「ルブンバシ~キンシャサ間」とあったのは、「マタディー~キンシャサ間」の間違いでした。大変失礼いたしました。早速訂正しました。

      どうも、日本が作った橋があるから、”ルブンバシ→ルブン橋”と結びつけてわたしの脳が作動するようです。橋があるのは「マタディー!!」とわたしの脳に言い聞かせました。

      バナナ港からマタディーまで大型船が入ってきて、以前はそこから鉄道でキンシャサまで運ばれてきたようですね。今もどうにかこうにか鉄道は動いているようですが、マタディーからはトラック輸送が主流になっている、と聞いています。
      地図で見ても、キサンガニまではコンゴ河は太く表されています。驚くことに、キサンガニから幾つもの支流に分かれてルブンバシ近く(と言っても100km以上の距離がありそうですが。)まで河は続いているのですね。わたしの手元の地図では、マタディー~キンシャサ間に3つの滝が存在し、キンシャサ~キサンガニ間は滝はなく、キサンガニ~ルブンバシ近辺までは川幅が細くなって10箇所もの滝が確認できます。
      アンゴラ(ルアンダ?)~ルブンバシ間に鉄道が存在するのですか?全長何kmの鉄道なのでしょう。想像するだけで壮大な鉄道だろうなと驚きます。

      TANABE様のご指摘のお陰で間違い箇所を訂正でき、また地図を広げて改めてコンゴの国全体を観る機会が持てました。ありがとうございました。
      ちょうど先ほど、夫が帰宅。ザンビアに駐在する夫の会社の者がタンザニアからルサカに戻る途中、乗り換え地のルブンバシから電話があったよ、と言うのを聞いたばかりでした。
      どうぞ、またよろしくお願いいたします。

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