我が家アパート3階北側からの8月下旬雨の朝の風景 |
リンガラ語には”中旬”とか”半ば”という単語が存在しないのだろうか、とさえ思ってしまう。
(ちなみに仏語には、”milieu”という単語があるけれど。)
先月8月23日だったか24日だったか、まだ夜が明ける前に、わたしは雨の音で目が覚めた。
実に3ヶ月ぶりの雨だった。
この雨で乾季は終わったのだと言う人もいる。
フランス語のコンゴ人の先生も、乾季の始まりの時と同じように、
「ほら、今までの空気の感じと変わったでしょ。乾季は終わったのよ。」
運転手のランドも同じことを言った。
五感で空気の変化を感じ、季節の移り変わりを敏感に察知するコンゴの人たち。
この3ヶ月ぶりに降った雨を、かれらはリンガラ語で、”Mbura ya makelele” 、或いは ”Mbura ya Likelele”というのだと教えてくれた。
「mbura」とは”雨”、「ya」は英語の”of ”と同じ。
「makelele」は”こおろぎ”の複数形で「likerere」は”こおろぎ”の単数形だそうだ。
だから、「こおろぎ雨」となる。
この乾季の終わりに降る雨で、土中のこおろぎが孵化して土から這い出てくるのだそうだ。
かれらは、「(ン)ブラ ヤ マケレレだ~♪」とうれしそうに、本当にうれしそうに言った。
こおろぎの季節がそんなに待ち遠しかったのか。
どのコンゴ人に訊いても、こおろぎはとっても美味しいんだよ。栄養満点だしね。
にこにこしながら、自慢げに言う。
わたしが怪訝な顔をしていると、日本ではこおろぎを食べないのか?あんなに美味しい食べ物を!!ああ、なんと残念なことだ!!
こおろぎの料理ってどんなものなの?、と訊くと、足や羽を取り除いて少しの(!)油でたまねぎやピーマンなどの野菜といっしょに炒めるのだそうだ。
あんなに美味しいものはない、とどのコンゴ人もうれしそうによだれをこぼさんばかりに話す。
この前の日曜日。日本大使杯ゴルフコンペが開催されたが、やっぱり朝起きると今季2度目の雨が降っていた。そしてやはり午前中で雨はすっかり止んだ。
この雨のことはもう、「(ン)ブラ ヤ マケレレ」とは言わないのだそうだ。
こおろぎ雨は1回こっきりの雨ということらしい。
もうじきこおろぎの季節だよ。待ち遠しいな、とは言わなかったが明らかにうっとりと待ち遠しそうな表情をしている。
夜になると、こおろぎはリンリンと歌うし、おいしいこおろぎ料理は食べられるしね。
♪ 雨が降ってきた~、歌を唄おう~、雨が降ってきた~、空の上から~♪
わたしが小学校のころ、6月の歌だったか、”今月の歌”で毎朝、全校放送でこの歌が流れて、なぜかルンルンで唄っていた記憶が蘇ってきて、口ずさむ。
インターネットのWikipediaでキンシャサの気候を見ると、5月の降水量159㎜、6月は8㎜、7月は3㎜、8月も3㎜、そして9月は30㎜、10月には119㎜になっている。
5月の平均降雨日数12日、6月=1日、7月=0日、8月=1日、9月=5日、10月=11日。
6月、7月、8月は極端に降水量が少ない。
4月と11月がいちばん雨が降る時期なのだと聞いたが、実際、Wikipediaの資料でも4月と11月がともに降雨日数16日で最多だ。
中央アフリカのバンギでは、雨季と乾季がキンシャサと真逆だが、乾季の終わりの4月初め頃に何日か降り続く雨を「マンゴー雨」だと呼んでいた。
その雨で、マンゴーが熟すのだと聞いた。(そしてマンゴー雨の後、ジャカランダやアカシアの花が一斉に開花してまさに”バンギの春”だった。)
日本の”梅雨”という言葉の由来も諸説あるようだが、「梅が熟す時期の雨」だから梅雨と書く、と聞いたことがある。
そういえば菜の花の咲く頃に降り続いて冷え込む雨を、日本人は「菜種梅雨」と呼ぶしなあ。
季節の雨を食べ物に関連付けて、特別な名前で呼ぶというのは世界共通のようで何だか愉快になってくる♪
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
平安の人の心持ちに共通したものを感じるコンゴの人たちだ。
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