2014年9月12日金曜日

こぼれ話3 ː キンシャサにはいなかった蝉

わが家のトイレの陶器製の蝉の掛け物

南仏では、蝉は幸せを運ぶ昆虫だと考えられている、ということはいつかのブログに書いたことがある。
南仏の店では、いろいろな陶器製の蝉の壁掛けが売られていて、本当にバラエティー豊かで楽しい。上の部分が開いていて、壁掛け型花瓶としても使えるようになっている。
わたしは南仏を訪れると、ひとつずつ、そんな陶器製の蝉を買い集めている。

というのも・・・。
何年も前のある夏の夜。
わたしは蝉に追いかけられたおかげで、頭の疾患を見つけることができ命を救われたということがあったのだ。

周囲の人たちから、あのしつこくわたしを追いかけた蝉は亡くなった母だったのだ、と言われたりもした。
亡くなった母が、わたしを病院で脳の検査を受けさせるために、蝉になってわたしを追いかけたのだと。

そんなことがあった後、南仏では蝉は幸せを運ぶ昆虫だと言われていることを知り、蝉はわたしの守り神のような存在になった。

そして、キンシャサへ。
コンゴは常夏の国だし、さぞかし、蝉がたくさんいることだろうと想像して行った。

ところが。
想像に反して、蝉の鳴き声がまったく聴こえない。
1月1日にキンシャサに到着して、2月になっても3月になっても、とうとう1年間蝉の姿を見ることも鳴き声も聴くこともなかった。

わたしは事あるごとに、あらゆるコンゴ人に、”蝉”のフランス語の単語、”la CIGALE” を使って、「コンゴに蝉、”la CIGALE”が生息するのか。」、と尋ね回った。
そして、異口同音、皆決まってこう言うのだった。

「CIGALE.。いますよ。リンガラ語でリケレレ、あるいはマケレレと言います。」

だったら、なぜ、蝉の鳴き声が聴こえないんだ?
不思議でならなかった。

ある時、日本にも何年か滞在した経験のあるコンゴ人のマダムに訊いてみた。
十代に日本にいただけあって、日本を離れて20年は経っているだろうに日本語は未だ衰えていないし、所作がまた日本人っぽい女性だった。

ションタルさん。キンシャサに、蝉、っている?

いるよ。
夜にリーンリーンと鳴く虫でしょ?
ん???
美味しいんだよ~。
んん?????

そう言うかのじょの蝉の説明を聞いていたら。
なんだ、それは、こおろぎだった。
リンガラ語で、単数形だと”Likelele”、複数形だと”Makelele”。
リケレレ。マケレレ。
乾季の終わる頃に降る雨を「こおろぎ雨」(”MBULA ya LIKELELE”)と言って、その頃にこおろぎの旬を迎えるのだと、かのじょは自慢げに教えてくれた。

あのね、それは蝉じゃないから。
こおろぎ、だから。

コンゴ人全員が、”la CIGALE”(フランス語で”蝉”)を、母国語のリケレレ、マケレレと思い間違いをしているようなのだ。フランス語で、こおろぎ、”le GRILLON”(グリヨン)って単語、あるんだけどね。

ちょうど今、グッドタイミングにラジオから、どこぞのこおろぎの鳴き声です、と流れてきた。
ふむ・・・。
こうやって聴いてみると、こおろぎの鳴き声と、蝉の鳴き声。
似てる、かも。
日本人は、夏のカンカン照りの太陽の下で鳴くのはセミで、秋の夜長のひんやりした草むらで鳴くからコオロギだ、とシチュエーションで鳴き声を識別しているだけなのかもしれない、とも思えてきた。
・・・なんて。

ともあれ。
わたしがそう説明しても、かのじょはピンと来ないような表情をしていたことを懐かしく思い出す。
かのじょは、外務省勤務の父親の転勤で海外に暮し、コンゴ人と結婚して二児の母親になっても、自分の国に馴染めないでいるようだった。
家族でイギリスに行きます、と言って別れたのが最後だったが、ションタルさん、どうしてるかなあ。

日本で蝉の鳴き声を聞いたのは2011年の夏以来、3年ぶりだった。
そして、蝉の鳴き声に更に暑さを感じて、「あー!!夏だー!!」と実感したことだった。

9月も半ば。今も遠くでときどき蝉の鳴き声が聞こえてくるが、もう、強い日差しの下での伸びやかな鳴き声ではない。
そろそろ、蝉の季節も終わりだな。

4 件のコメント:

  1. この蝉さん達、二匹は私がプレゼントしたものだけどね〜
    お手洗いで、用を足しながら、私を思い出してくだされ。

    返信削除
  2. え、そうだっけ????????
    トイレの中で、マユミさんとのフランス珍道中のことやら、もちろん、あなたたちとアンティーブの滞在の思い出もよみがえって、ついついトイレ滞在時間が長く長ーくなってしまいますですよ。

    返信削除
  3. 11月からコンゴ民主共和国に働くために行く韓国の学生です。(日本語はフランス語の後に習っています)現地の生々しい情報とhiroさんの感想ありがとうございます!私は少なくとも2年間キンシャサに滞在する予定です。もっと詳しくこの国について知りつつあって嬉しいです。出国まで時々ブログに訪れます。

    返信削除
  4. Macchiatoさん、コメントをありがとうございます。キンシャサで、たくさんの韓国のマダムたちと楽しい交流を持ちました。ヒロコを知っているキンシャサの韓国のマダムたちにどうぞよろしくね!本当に親切で誠実で、大切な友人たちです。
    よろしかったら、またコメントください!

    返信削除