2014年6月28日土曜日

赤黒虫の思い出

6月10日の日経新聞ニュースメイルで、「やけど虫が発生中!」という警告ニュースを見つけた。

”やけど虫”と紹介されていた赤黒虫 日経ニュースレターより

この虫に触るだけで、やけどしたように赤くただれ、強いかゆみを伴うと書かれていて、現在、日本で大量に発生中なのだそうだ。

そんな記事を読んで、20年前に住んでいた中央アフリカの首都バンギで子どもたちがひどい被害に遭った”赤黒虫”のことを思い出した。

確か、この赤黒縞模様の虫は、雨季の終盤に大量発生したように記憶している。
最初は羽を持って飛んでいるのだが、雨に当たって羽がポロリと取れてしまうと、植物やいろいろなところに付いて、この虫(実際には虫の体液)が人間の皮膚に触ると、やはり赤くただれて、痒いから掻いてその手で別の皮膚のところを触るとそこに虫の体液が付いて赤くただれる、という悪循環を繰り返すのだ。

赤黒虫が発生する同時期に、緑色のイナゴ、”キンダゴゾウ”がこれまた大量発生した。
キンダゴゾウさんは中央アフリカ人の貴重な動物性タンパク供給食料で、ゴゾウさんが大量発生する雨季最終盤の夜になると、かれらは木の下に陣取って、七輪もどきとフライパンを持ち込んで、電灯に群がるゴゾウさんを獲って羽をむしり、熱したフライパンでから炒りするのだった。
辺りじゅうにゴゾウさん(イナゴのことだが)の香ばしい炒った匂いが立ちこめ、賑やかに宴会が始まっていた。それが9月とか10月だっただろうか。

バンギは北緯4度。
キンシャサは南緯4度。
赤道を境にして、雨季と乾季が真逆になる。
キンシャサは5月下旬から、6月、7月、8月、9月上旬と乾季なのに対し、バンギはその時期は雨季となり、最終盤の9月終わりごろに確か、キンダゴゾウ(イナゴ)が大量発生していたと記憶する。わたしや子どもたちがそれぞれに書いていた通信が手元にあればはっきりしたことが分かるのだが・・。
ま、そんな記憶がある、ということで。

子どもたちは、そのキンダゴゾウさんを捕獲してペットボトルをゴゾウさんで満タンにしてから門番のおじさんたちにプレゼントする、ということを楽しんでいた。
子どもたちには子どもたちの知恵があって、素手で捕まえると手が臭くなるので、使い古した靴下を手にはめて捕まえることに没頭するのだった。
没頭するあまり、やはり大量発生中の赤黒虫が皮膚に付着するのすら感じず、気が付くと赤黒虫にやられて皮膚が赤くただれるのがオチだった。
娘は、赤黒虫の体液が付いた手で目をこすったものだから、ある年は目の周りがパンダのごとく赤くなり、両目を眼帯するわけにもいかず、片目に眼帯、もう片一方は目の周囲を極力ガーゼで覆って、大騒ぎして通学した日のことを懐かしく思い出す。

中央アフリカの国語であるサンゴ語で、イナゴのことを”キンダゴゾウ”と言い、子どもたちは「キンダゴンゾウさん」と親しみを込めて呼んでいた。
わたしは密かに、「金田権蔵さん」と漢字を当てたりして、長屋隣のおじさん風に(勝手に)身近に感じていた。

・・で、赤黒虫のことに話を戻すが、バンギではその虫のことを「パピヨニット」と言っていた。
蝶のことをフランス語でパピヨン。
赤黒虫は最初は羽を持っていて蝶のごとく飛んでいたから、「パピヨニット」・・・だったのかな?

日本では、「やけど虫」。
中央アフリカ、バンギでは、「パピヨニット」。
わたしたち家族の間では、「赤黒虫」。

キンシャサには赤黒虫っていないのかなあ、と思っていたら、つい最近、夫がゴルフ場で赤黒虫を見たそうだ。
キンシャサゴルフ場1番ホール

キャディがこの虫にやられると痛いから気をつけるようにと言っていたそうだ。
虫の名前は特に言っていなかったらしい。

キンシャサでは大量発生する虫というのがないのかもしれない。
バンギでは雨季の始まりに羽アリがやはり大量発生していたことも思い出される。
羽アリも中央アフリカ人の貴重な動物性たんぱく質の食料だった。
確か、そうだったはず。間違いないはず・・・わたしが当時書いていた通信を見れば、はっきりしたことがわかるのだけど。

わたしには、ひとつひとつが愛おしい大切な思い出だ。
我が家の娘、息子は、そんな小さなことだけど、バンギになさそうでしっかり存在した歳時記とそれにまつわる出来事を覚えているかな。

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