2013年10月15日火曜日

満開の”ウェンゲ Wenge (Bois noir)"によせて

今日は、キンシャサ・ゴルフクラブのコースにある、満開の紫色の花が美しいウエンゲの大木を中心に、熱帯アフリカの花木について書いてみようと思う。



キンシャサ・ゴルフクラブ6番ホール ウエンゲの大木 花満開 2013.10.08

キンシャサ・ゴルフクラブ練習場 ウエンゲの花のカーペット 2013.10.08

ウエンゲの花 まるで藤の花のよう!


10月に入って、キンシャサのゴルフクラブのウエンゲの大木の花が一斉に咲き始め、先週、満開を迎えた。
昨年もちょうど10月が満開時期で、大木の下は紫色のカーペットが敷かれたような風景を楽しんだものだった。
紫色のウエンゲの花は、まさに藤の花のように円錐形に花を付け、マメ科の花だとすぐに分かる。


最初、どのキャディに尋ねても、この木は「boir noirだ。」と言うだけだった。
bois noir とは、直訳すると「黒い木」だ。
黒い木なら、黒檀かも。
黒檀ならエベンヌ ebene と言うはずだ。

「じゃあ、この木はエベンヌなの?」
すると、「どちらも boir noir だけれども、この木はebene ではない、ほとんど(presque)似ているけれどもちょっと違う。」
まるで一休さんのとんちクイズのようなことを言う。
どちらも家具や工芸品に使われる良質の木材だとも言った。

電子辞書やインターネットで調べても明快な解答が得られない。
フランス語辞書も駆使して、更にキャディやゴルフ場で働く人々や、我が家の物知り運転手にも聞きまくった。

そして一つの解答にたどり着いた。
boir noir は日本語で「黒い木」だけれども、「黒檀」ではない。

「黒檀」は、フランス語で”エベンヌ ebene”と言い、カキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木。
別名エボニーとも言い、原産地はインド南部からスリランカであり、インドネシア(セレベス島)を中心に東南アジア全域に生育し、またアフリカの一部にも見られる。
黒檀はマメ科ではないのだ。
日本では仏壇に黒檀が使われるのは、原産地がインド、スリランカだということと関係があるのか。とても重く、耐久性に優れた良質の木材であることは確かだ。

では、キャディが、「この木はboir noirであって、エベンヌebeneとはほとんど同じだけどちょっと違う。」と言うこのマメ科の木は何なのか。
紆余曲折の末、この木はウェンゲ wenge と言うことが判明。
仏和辞典(ロベール/小学館)によると、ミレチアとも言い、熱帯アフリカ産のマメ科ナツフジ属Milletiaの高木で、木材は家具,細工物などに使われる。ウエンゲ、とは、アフリカ中部(カメルーン)の一言語だ,と言う説明が載っている。
また、インターネットの”木材”の項目で調べると、この木は、”アフリカンブラックウッド”という名で載っている。ブラックウッド・・・・・まさに”bois noir 黒い木”、である。
”アフリカン・エボニー”とも、”アフリカ黒檀”とも呼ばれるのだそうだ。
マメ科Delbergia属の広葉樹で、タンザニア、モザンビークなどのサバンナに生育するそうだ。
カキノキ科の黒檀に非常によく似ているが、この”アフリカンブラックウッド”はマメ科で、紫檀やローズウッドの仲間だということだ。
この”アメリカンブラックウッド(ウェンゲ)"は黒檀より硬く,材質は滑らかだと記載されている。

なるほど。
キャディたちや我が家の運転手が言った、「この木は、boir noir だけれども、黒檀ebeneではない。ほとんど似ているけど、ちょっと違う。」という説明も、あながち虚言ではなかったのだ。


ということで、今が満開の紫色の藤のような紫色の花を付けた、ゴルフ場のこの大木は、”アフリカンブラックウッド”,”アフリカ黒檀”とも表記される「ウェンゲwenge」の木だということが分かったのだった。


わたしが、写真を見せずに「キンシャサでは、紫色の花を付けた大木が満開だ。」と言ったら、大半の人たちは、「ああ、それはジャカランダだね。」と思われるだろう。
でも、花の形からして全くの別種なのだ。

では、”ジャカランダ jacaranda”とは、どんな植物なのか。
wikipediaによると、”ノウゼンカズラ科に属する中南米原産の低木または高木”とある。
見かけはアカシアやネムノキに似ている、ともあり、花冠は5裂し、青色または紫色の花。また、原産地では桜のように葉が出る前に花が咲くようだが、栽培環境によっては葉が出た後に花が咲くこともあるらしい。
49種ほどからなり、中米,カリブ海,南米西部原産と、ブラジル原産の2つの節に下位分類されるのだそうだ。
マメ科のブラジリアン・ローズウッドもジャカランダとよばれたりもするらしいが、別目とのこと。



もう、頭が混乱しそうな状況になってきたが、もうひとつ、混乱ついでに、「カエンボク(火焔木)」と、
「火焔樹(ホウオウボク)」の違いについても書いておきたい。

ます、”火焔木=カエンボク”について。
英名 African Tulip Treeと言い、ノウゼンカズラ科。
西アフリカ産の常緑高木で、一年を通して赤みがかったオレンジ色の釣り鐘形のやや上向き加減の大きく派手な花を枝先に多数咲かせ続ける。釣り鐘形の合弁花というのは同じノウゼンカズラ科のジャカランダも同様。
カエンボク属は、本種を含めて3種が知られており、いずれも熱帯アフリカ産。

一方、”火焔樹=ホウオウボク”というのは。
マメ科ジャケツイバラ亜科の落葉高木。(マメ科を卒業、とあるかどういうことだか??)
原産はマダガスカル産。緋紅色の蝶形の花が咲く。
別名 フランボワイアン Flamboyant とも言うが、”火焔樹~かえんじゅ”という名で知られているかもしれない。
キンシャサの大銀行、Trusut Merchant Bank(TMB)のシンボルマークに使われている。  

なんとややこしいが、「火焔木」と「火焔樹」はまったく別種の木だったのだった。


Trust Merchant Bank の商標 火焔樹



ジャカランダ(Jacaranda)、カエンボク(火焔木)、ホウオウボク(火焔樹)を、世界三大花木、あるいは熱帯三大花木と言うのだそうだ。

もう少し付け加えると。
”アカシア”は、マメ科ネムノキ亜科アカシア属。
バンギ(中央アフリカ)では、4月、雨が降り始めると一斉に黄色い花を付けていたように記憶する。ネムノキの葉とそっくりの葉だったのもまた覚えている。

では”ネムノキ”はというと。マメ科に属するが、マメ亜科に特徴的な蝶形花とは大きく異なり,花弁が目立たず、淡紅色のおしべが長い花だ。
果実は、細長く扁平な豆果である。キンシャサ・ゴルフクラブのあちこちで見かける低木だ。

木ではないが、オジギソウという草花がある。
小さいとき、葉に触ると途端に葉が閉じてしおれてしまう不思議な葉だった。
葉が閉じてしおれて、おじぎをするようだから、オジギソウと言うのだと教えてもらったことがある。
オジギソウも,マメ科ネムノキ亜科なのだそうだ。
南アメリカ原産だと記載されている。
でも・・。20年前、中央アフリカ共和国の首都バンギから南西に7,80kmほどの村にピクニックに行ったとき、ピンク色の小さな花をつけたオジギソウが自生しているのに出くわした。日本ではオジギソウは買わなきゃ入手できない植物だったけど、アフリカには雑草として草むらに普通に生えているんだ!、と感激したものだった。


ネムノキ、アカシア、ホウオウボク、ジャカランダの葉はオジギソウの葉に似ている。

ホウオウボク(火焔樹)、ウェンゲ、アカシア、ネムノキ、オジギソウはマメ科の植物で、ジャカランダ,カエンボクはノウゼンカズラ科の植物。
そして、大半の樹木は花が終わると、大きな長いマメの鞘がぶら下がって、ああ、熱帯アフリカの花木はマメ科の植物が多いのだなあ,と言う印象を持つのだった。

日本から遠い熱帯アフリカの植物形態に関して知識情報が交錯したりしているが、機会があったら是非、系統立てて見つめ直してみてほしい。
とても興味深いアフリカの植物たちだ。


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