2017年5月10日水曜日

キンシャサ便りふたたび32 キンシャサの通貨の摩訶不思議

5月中旬となり、キンシャサは雨季のしめくくりの時季だ。雨が昨年に引き続き、少ないと言われていたが、ここ2週間ほど夕方から夜中にかけてまとまった雨量で、先週末のゴルフクラブ主催のコンペは中止になり、現在も一部閉鎖が続いている。
街中のアスファルトのはげたでこぼこ道には大きな水たまりができ、迂回する車が立往生し混乱しまくりだ。そんな混沌とした光景を目にすると、ああ、キンシャサだ、と痛感する。

混沌、と言えば・・・。

キンシャサの通貨は、この国の通貨であるコンゴフラン(CF)と、米ドルの2本立てだ。
そして、紙幣だけで、コインは存在しない。
不思議なこと、極まりない。

ヨウムの絵の1000コンゴフラン札と、ホロホロ鳥の絵の5000コンゴフラン札

だいたい、コンゴフランは50CF札から100、200,500,1000CF札くらいまでが一般に流通し、たまに2千CF札とか5千CFも見かける。一時期、一万、二万CFとかの高額CFも見かけたが、現在はほとんど見かけなくなった。

パーム椰子とカンムリ鶴の絵の20000コンゴフラン札 (2013年5月撮影)

米ドルのほうはというと。
どういうわけだか1米ドルはまず受け取ってもらえないので、キンシャサでは5米ドルから100米ドルまでが流通している。

2017年5月現在、概ね、”1米ドル=1350CF~1400CF”
2012年1月、わたしたちがキンシャサ生活を始めたころは、1米ドル=930CFくらいだったから、「1000CF札=100円」だと思って買い物をしようと思ったものだった。
コンゴフランの価値はだんだん下落し、2016年6月には、1米ドル=1100CFになり、今年に入って1米ドルが1300CF台に突入。1000CF=80円ちょっとくらいになってしまった。

この国の前首相が公務員の給料支払いをコンゴフランでの銀行振り込みにして以来、公務員給料は現地通貨のコンゴフランでの支給になったと聞く。この国の通貨をコンゴフランのみに統一しようという政策だと聞いた。コンゴフランのみの通貨社会にするには10年はかかるだろうと言われたらしい。
その頃出回った1万CFや2万CF(単純計算では約10米ドル、20米ドル)といった高額CF紙幣は、現在、どこに消えていったのだろう。とんとお目にかからなくなった。
そして、その前首相は失脚し、政府の表舞台から外れてしまったとも聞いた。

コンゴフラン安に伴い輸入品価格は上がり、それにつれて物価も上がり、一般庶民は軒並みコンゴフランでの生活だから、生活はどんどん苦しくなる一方だ。
(コンゴから出てしまうと、コンゴフランは紙切れ同然で、コンゴフランは外国通貨との換金の対象とはならない。)

ところで、この5米ドル紙幣の写真を見てほしい。

上が本物紙幣、下は偽造紙幣

紙幣の右半分を比較すると、上の紙幣の背景にはプリント模様があるが、下の紙幣にはそれがない。
わたしがある日、ゴルフ場で模様無しの5米ドル紙幣を使おうとして拒否されて、偽札の存在を初めて知った。
なんと、コンゴでは、偽札が出回っているのだ。

昨年12月に、わたしが買い物で100米ドルの旧紙幣を出すと、受け付けてもらえなかった。
これはコンゴでは使用できないから、ヨーロッパで使いなさいと言われたのだ。
100米ドル紙幣では、新札のみ受け取ってくれて、旧紙幣は受け取ってもらえない。
100米ドル旧紙幣の偽札が出回っているという噂が流れているためだと言う。
アフリカの大部分の国が口承文化であるため、噂は瞬く間に広がっていく。
(もちろん、パリの空港で無事に旧紙幣の100米ドルは何の問題もなく使えた!)

また、1米ドル札が使えないというのも不思議なことだ。
1000CFの品物を買うのに1米ドル紙幣を出すと、拒否される。
噂では、1米ドル紙幣を半額で計算してくれることもあるとか。


そして、ボロボロの汚いコンゴフラン紙幣があちこちで出回っているのに、わたしがコンゴフランで普通に支払おうとすると、この紙幣は破れているから受け取れない、だの、端っこが切れているから使えない、だのイチャモンを付けてくる。
米ドルでも同じことが起こる。
先週、フランス語の個人レッスンを受けているコンゴ人女性から、前の週にわたしがかのじょに支払った20米ドル紙幣の端が切れていたらしい。キンシャサでは使えないから、勤務先のアメリカ人に替えてもらえたからよかったけど、次回からは気を付けて、と注意された。
自分たちのことは棚に上げて、紙幣の状態に異常なほど注意を向けるコンゴ人たち。
だったら、アンタのこのお釣りの汚いボロンボロンCF紙幣は何なのさー!、と言いたくもなってくる。
まるでもう、トランプの”ババ抜き”ゲームみたいなものだ。

また、こんなこともあった。
3月に日本から知人がキンシャサに来てアクセサリーを売るブティックで買い物をした。
そして、ついこの前、わたしが久しぶりにその店に入ると、コンゴ人マダムがわたしの顔を見るなり、待ってましたとばかりに、かのじょはこう言ってきた。
アンタがこの前(でもない1ヵ月以上も前のことなのに)ここで買い物をした時この5000CF紙幣で支払ったが、この紙幣は使えないから別の5000CF紙幣に替えろ、と言うのだ。
はー?
その紙幣がわたしの出した5000CF紙幣だっていう根拠はどこにあるのだ!?
でも、憐れみいっぱいで訴えてくるコンゴマダムを前に、結局、わたしは5000CF紙幣をわたしの財布の中の別のものに替えて渡したのだった。
周りのコンゴ人も巻き込んでかのじょの言い分を聞くと、紙幣の通し番号の末尾に”C”が入っているのは使えないのだと言うのだった。
確かに、かのじょが主張してきた5000CF紙幣の通し番号末尾には”C”が入っていた。わたしは、”C”が入っていない5000CF紙幣をかのじょに差し出すと、あちこちから眺め回さんばかりに点検確認して、仕舞い込んだのだった。

ということは、この国には、偽札の米ドル紙幣だけでなく、コンゴフランにも偽札が紛れ込んでいることになる。5000CF紙幣の偽札が出回っているということが新聞に載ったことがあるそうだ。だから、5000CF紙幣が嫌がられるのか。
これもまた噂に過ぎないが、コンゴ政府、というかコンゴ中央銀行自体がそういうものを偽造しているのだということまでまことしやかに聞こえてくる。


スーパーマーケットや小ぎれいなパティスリー、ゴルフ場から、普通の布地屋、路上の野菜売りマダムたち、ほとんどのところで米ドルでの支払いが可能だ。そして、お釣りは米ドル交じりのコンゴフランで戻ってくる。
店舗のレジはすべてコンピューターシステム。
スーパーマーケットのレジのところには、”1米ドル=140CF”とか、”1米ドル=130CF”とか換金レートが表示されている。
南アフリカ資本のスーパーマーケットの換金レートは1米ドル=130CFだと表示されている。米ドルで支払うと他のスーパーマーケットより率が悪いからそこではめったに買い物をしないという外国人の話も聞く。キンシャサは、アフリカの国々の中でも外国人にとって物価の高いことにおいても悪名高い都市だ。

外国人向け価格とコンゴ人向け価格が存在するキンシャサ。
外国人が露店で果物を買うと、現地人の倍の値段で売りつけられる。
わたしは一般庶民地区で買い物をしたことがないから知らなかったが、わたしたちがいつも買い物をするスーパーマーケットで普通に買えるキッコーマン醤油は庶民向けの店には置いていないのだそうだ。一般庶民には醤油なんて必要ないものな。
それぞれが自己防衛して、身の丈で生活している。

わたしなんぞ、米ドル交じりのコンゴフランでのお釣りを前に、頭の中は???が飛び交うばかりだ。
その上に、レジ係員の傲慢さ。
横柄な態度で、この紙幣は使えないときっぱり言ってくるし、お釣りを渡すときは、こちらに落ち度はないとばかりに自信たっぷりにボロボロ紙幣に偽札紙幣(かどうかは知らないが)をよこしてくる。”ババ抜き”のときのポーカーフェイス気取りなのか?
この国で生きて行かねばならない庶民の生きる知恵、自己防衛なのだろうけど。

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