2017年3月27日月曜日

キンシャサ便りふたたび26 久しぶりのAcadex学校再訪

Acadex学校校舎を出て校庭を横切る

3月17日、約3年ぶりに、キンシャサ中心地から1時間半ほどの高台にあるKinbondという地域に建つAcadex学校を友人たち,夫の4人で再訪した。

初めてAcadex学校を訪れたのは2012年3月頃だった。
慶応大学藤沢湘南校の教育チームと建築チームが支援実践する現地の子どもたちのための学校で、初訪問の時はまだ校舎は一棟だけで、広大な校庭が印象的だった。
それから機会があるたびにわたしたちは2度、3度とこの学校を訪ねた。
そのたびに、校庭で生徒たちが歌(日本の歌も!)と遊戯を披露してくれて歓迎してくれたことを懐かしく思い出す。来訪者を受け入れてくれる開かれた学校だというイメージを持つ。

毎年、夏休みを利用して教育科、建築科の学生たちと教官がKinbondに滞在して、学校のカリキュラム運営に関わり、また、2教室続きの一棟ずつが建設されていく予定だと最初の訪問で聞いて、小さな一粒、二粒の種が芽を出して伸びて行こうとするイメージを思い描いた。

それが、なんと今回の訪問で、校舎が着実に増築され、校庭の周りをぐるりと囲んで建っていたのだ。あれだけ広いと感じていた校庭が狭くなってしまっているのにびっくりした。

Acadex学校は現在、幼稚園年中組と年長組、小学校6学年、中学校3学年のクラスができて(何と日本式の学年分け!)、熱心な授業が繰り広げられていた。
地域的に水道が引かれていないから、校内に雨水を貯めるシステムを取り入れて貯水タンクが校内に設置され(安全上、しっかりと施錠されていた。)、水洗トイレなどに利用されているそうだ。
電気は停電が多いのか、時間制限なのか?
だから、屋根の傾斜を工夫設計して、天井からの自然採光で教室が明るく保たれている。
明るい教室で学べる環境は大切な教育条件だと思う。


幼稚園年長クラス アルファベットを書く授業が行われていた

慶応藤沢湘南校で教鞭を取るコンゴ出身のサイモン先生が日本式の学校システムを取り入れた学校を故郷に建てたいという意志を汲んで、長谷部葉子先生率いる教育のゼミ生たちと、建築科の先生とゼミ生たち(後に保健衛生チームも加わる)がAcadex学校プロジェクトを始動したのが約10年前だという。
学校の敷地はサイモン先生所有の土地だと聞いた。
10年の間に、こんなにしっかりと、幼稚園から中学校までの教育の芽が育ち花咲かせていたのだ。

Acadex学校の象徴であるアーチの丸い校門(建築科学生たちの2年がかりの力作だったことも思い出深い!)もそびえ立ち、訪問者を歓迎するかのように花壇が整えられ、小さくなってしまった(!)校庭があり、その校庭をぐるっと囲むように4棟(だったか?)の校舎が建っている。
教員室もある。
内科医でもある校長先生のヴァスティーさんが私たちを各教室に案内してくれた。
彼女はまだ若い女性だが校長先生としての強い責任感を持っている賢明な女性だ。日本語も勉強しているそうだ。

シゲキセンセイから習ったという歌とお遊戯で歓待してくれた年長、年中クラスの園児たち

教育チーム、建築チームに、途中から保健チームも加わって、校内に明るく清潔な保健室も設置されている。展示物が充実していて視覚的にも楽しく、居心地の良い室内だった。





エプロンを使って、あなたたちのお腹の中にはこんな内臓が入っていて、口からご飯を入れるとこんなところを通ってかみ砕かれて栄養分を取って、ここで息をして血液を全身に流し、不要分はうんちやおしっこになって体外に出て行くのだという仕組みをわかりやすくイメージできるようにしたり、模型や有名サッカー選手のポスターを使った展示物で自分の体に興味を持つような工夫がすばらしい。
水道のない校舎内では、雨水が貯められて使われているが、保健室ではピンク色のかわいらしい洗面手洗い器が入り口に設置されていた。
帰るときにもう一度保健室を訪ねると、お腹が痛いという女の子がベッドに横たわっていた。


Acadex学校に向かうために幹線道路から右折すると未舗装の狭い道路がくねくねと続き、今回も道に迷ってしまった。
すると、また、地元の子どもたちがどこからか湧いて(!)きて方向を指してくれる。「日本の学校」と尋ねると界隈の人たちは皆、あそこだよと教えてくれるのだ。
前回は、小さな子どもたちが数名、わたしたちの車に乗り込んでAcadex学校まで案内してくれたが、今回は、自慢の(きっと!)自転車にまたがった男の子二人がついてこいと言わんばかりに先導して案内してくれた。お礼にお土産のキャンディをあげると目を輝かせて受け取った。
そして、到着後もいつまでも、校門の外でじいーっと校内を見つめていた。かれらは、学校に通っていないのかな、それとも、違う学校に通っているのかもしれない。
この国には、義務教育制度がないから、お金を払えないと小学校にも通えないのだ。

ここに通う園児、学童、生徒たちは皆、清潔な身なりをしている。教育熱心な家庭の子どもたちだと想像できる。

Acadex学校が初めて園児と小学校1年生を受け入れてから10年。
来年度には第一期生も高校生になる。そんな彼らに合わせて、今夏には高校クラス設置に向けて始動するそうだ。
高校3年終了時に実施される大学入学資格のためのバカロレア試験対策カリキュラムにも着手するのだろう。
また、来年度には幼稚園年少クラスも設置されるのだそうだ。


コンゴ出身のサイモン先生の夢が、慶応大学で根付き、教官、学生たちにバトンタッチされていき、この10年で大きく大きく育っていっている。
夫が、しみじみと言った。
「最初に訪問した時は生徒数100人と言っていたなあ。でも、今回の訪問で生徒数が400人になったと聞いたよ。すばらしい教育を実践している証拠だなあ。」

すばらしい学校を作り上げてきたこのプロジェクトに関わるすべての方たちの実行力に大感動の一日だった。

※ Acadex学校プロジェクトの記述で間違い箇所がありましたら、ご指摘ください。ご迷惑をおかけすることのありませんように。(筆者)

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