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木の下理髪店 遠景 |
20年前の中央アフリカ共和国の首都バンギでは、庶民の理髪店といえば、木の下・野外床屋ばかりだった。大きな木の板を横3列×2段に区切り、つまり6区画にヘアスタイルを描いて枝にぶら下げ、客は「この髪型にしてください。」と(多分)注文する、というような「木の下理髪店」ばかりだった。
そして、現在のキンシャサでもその「木の下理髪店」が健在だ。
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木の下理髪店 ズーム |
どこかの建物の塀に欠けた鏡を立てかけて開業する野外理髪店も見かける。
つんつるてんの頭をしたおじさんが、神妙な顔をして、鏡の前に座って理容師に相談しているような場面にでくわして、ひとり笑い転げたことも2度や3度ではない。
(実際、アフリカの男性も女性も、髪は縮れ毛で量は少なく、あまり伸びないようだ。)
ところが、バンギ時代から20年を経たキンシャサで、ほ~お!!、とうなった新式理髪店をこちらに来てまもなく発見した。
テント式理髪店だ。
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ポワ・ルー産業道路沿いに並ぶテント理髪店 |
おそらく整髪剤会社がスポンサーになって、開業する理容師に無償でテントを配布するのではないだろうか。テントの側面には、整髪剤の広告なのか、商品の写真がプリントされている。
客のプライバシーが守られたあたり、木の下理髪店より一歩前進したスタイルだー!、と感動を覚えたものだ。
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レースカーテンを引いたテント理髪店
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ちょっと改造して、独自に工夫を凝らしたテント理髪店もあるし、客が集まるからか、野外茶店が併設されている場所もある。
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ちゃっかり、茶店も開店中!
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で、我が夫はどんな理髪店に行っているかというと・・。
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インド人経営の理髪店 |
インド人のおじさんと、その甥が経営するこざっぱりした理髪店に行っている。
夫がキンシャサ入りした当初から通っているらしく、顧客としてもう3年目になるらしい。
キンシャサで理髪店を経営する叔父さんを頼ってここへ来た、と言う経営者の若い甥はまじめな仕事ぶりだ。
当初も今も変わらず、散髪代は5ドルのまま。ヒゲもきれいに剃ってくれる。かみそりの刃は客ごとにきちんと替えている。
この理髪店は、キンシャサのごみごみした商店街の中にあり、わたしが最初に夫に同伴していった(夫は眼鏡を外すとほとんど鏡の中の自分の姿が見えないらしく、ある時、テポドンの国の指導者そっくりの髪型で帰宅したことが!それで何回かくっついて行ったことがある。)ときは、まずインド料理の食堂に入って行き、その食堂の店内にあるドアを開けると、そこが理髪店になっていた。
よくもまあ、この理髪店を見つけたものだと感心していたら、前任者からの紹介だということだった。
その後、この理髪店は訪れる度に内装に手が入り、道路に面した壁に玄関扉が付き、理髪店の体裁が整えられていった。
(この界隈は、インド食材店もあり、インド人街の様相を呈しているように思える。)
他の日本人は、大きなスーパーマーケット近くの小ぎれいな理髪店(レバノン人経営か?)で20ドルとか30ドルとか払って整髪してもらっているという話だ。
では、女性の美容室はどんな様子なのだろう。
昨年半ば頃だったろうか。
夫が、こんな美容室を見つけたよ、と写真を撮ってきた。
小さな子どものいる若いコンゴ人女性が開く店だったそうだ。
コンゴ人女性の頭には短い縮れ毛が生えているだけだ。
わたしはよくコンゴ人女性から、真っ直ぐな髪が多くあっていいね、と羨ましがられる。
かのじょたちは、直毛で豊かな髪に憧れているようだ。
で、かのじょたちは、明らかにカツラでしょう~、と分かるカツラを帽子のように被っている。
(若い女性は、わたしの小さい頃にアメリカから来て人気のあった”バービー人形”そのものだ。)
或いは、着け毛、”エクステ”で髪にボリュームを出している。
エクステで頭全体を編み込みにしたり、うしろで自毛をまとめて、そこからエクステを長く垂らしたり。
我が家の家政婦がきれいに頭全体を編み込みにして来た日、わたしはかのじょに訊いてみた。
いつも行く美容室は、店ではなく、自宅でやっている女性のところなのだと言う。そこへ、自分で着け毛を買って持ち込むのだそうだ。
代金はいくらか忘れたが、彼女の給料の割合からして結構な値段だったように思う。
その状態でずいぶん長くもたせるから、実際の話、臭う。
エクステのために、頭の地肌にてかてかと接着剤をつけたり、暑い気候の中でボリュームたっぷりのカツラをつけたり。
見た目からして、清潔だとは言い難い。
女性のカツラは人工毛で、キンシャサに韓国人経営のカツラ工場がある。
経営者は男性だが、その下に韓国人の女性(わたしよりちょっと若いかな。)がマネージメントをしているそうだ。
町行くキンシャサの女性の99パーセントがカツラかエクステを着けているといっても過言ではないだろう。
(カツラ着用の男性は、アーティストだけ?レゲエのような髪型をしている男性を稀に見かけるのみだ。)
だから、美容室といっても、カットしたり、パーマをかけたり、ということはないはずだ。
エクステ着けて編みこむ、くらいなものか。
20年前のバンギでは、女性の着用する服がアフリカ布地のロング丈のものだったから、共布で頭にターバン風に巻いて縮れ毛を隠し、ボリュームを出していた。
現在のキンシャサには、頭に布地を巻く女性はまずいない。また、髪の毛を数箇所まとめてマゲを作ってピンと立たせる、という髪型も姿を消した。
外国人女性のための美容室はスーパーマーケットの中や、街中にもあると聞くが、わたしはキンシャサで一度も行ったことがない。
先月、娘の住むアンティーブに行った時に、娘が勧める美容室でショートへアにしてもらった。
いろいろと相談にのってもらって、気に入るスタイルにしてもらえたと満足している。
パーマなしカットのみで、60ユーロ(七千五百円くらい)だった。
最近読んだ日経ニュースメイルで、世界37カ国41都市の世界の床屋の写真を撮り続け、写真集を出版した日本人写真家が紹介されていた。パリの理容師はフリフリの服を着て華やかに、ロンドンの高級理容店ではキリリと紳士の背広姿で、イタリアの理容師はおしゃれで粋な蝶ネクタイ姿で仕事をしていた。
世界の理容師の姿の比較もまたおもしろいだろうな、と思った。
そして、キューバ国営床屋の理髪代金4円、というところから、パリのセレブ御用達カリスマ理容師の代金7万円というところまで取材したそうだ。
世界にはいろんな理髪店が存在するのだろう。