2017年10月19日木曜日

キンシャサ便りよもやま話3 わたしは、フェリシテ

映画「Felicite」より

今日、わたしは、映画「Felicite」の試写会に行ってきた。

上の写真が、この映画の主人公、フェリシテ。
キンシャサのバーで歌手として生きる、誇り高く、どっかりたくましく生きるコンゴ人女性だ。かのじょは、一人息子を持つシングルマザーでもある。

映画は、かのじょが生きるキンシャサの夜のバーの音楽場面から始まり、しょっぱなから、もうキンシャサの空気満載だ。
(バーで演奏する面々は、世界的に活躍し、「原初的かつマジカルな響きで世界中の聴き手を魅了してきた」と評されるカサイ・オールスターズ。パパ・ウェンバの出身地でもあるコンゴ南部のカサイ州出身の、個々のメンバーから集まって2005年に結成されたグループなのだそうだ。~映画パンフレットより)
冒頭部分だけではなく映画全編がキンシャサそのものだ。
気だるく目覚める主人公の住む地区界隈の朝。ゴミ箱をひっくり返したような町で、交通ラッシュの中に身を投じるエネルギッシュなキンシャサ市民の暮らし。コンゴ人の小金持ちの、中心地よりちょっと離れた高台?に建つ邸宅。夜の飲食街・・・。
映画全体にキンシャサの空気が流れる。
監督が、まだ若いフランス系セネガル人で、キンシャサロケにこだわったと聞いて納得した。

そんな、貧しくも図太く、助け合いながらも欺き合い、プラスとマイナスが背反して存在する、全てがカオスのアフリカ大都会に生きるキンシャサの人々の中で、女性たちこそ、いちばんたくましく生きているのではないかと思えてくる。
そのひとりが、この映画の主人公、フェリシテ。

中古のオンボロ冷蔵庫を言葉巧みにつかまされたばかりにさっそく修理して大金をつぎ込まなければならなくなったと嘆くかのじょのもとに、一人息子が交通事故で大けがを負い、病院に運ばれたと連絡が入る。
入院費用と手術費用になりふり構わずに東奔西走するフェリシテの姿をカメラが追う。
もちろん、ゴミ溜めのようなキンシャサの町を背景にして。
貧しい町で生きてゆくには、誇り高くも、口八丁手八丁、ついでに足八丁さらには心も張っていかなくてはならないのだ。

そんな町で生きる、たくましいフェリシテにも、ふ・・っと萎えてしまう時がくる。
その心の葛藤を描く、詩的な映像の美しさ。
熱帯ジャングル、というより優しい心の森でもがくフェリシテと戯れる生きものが、コンゴ民主共和国にしか棲息しないと言われるオカピ。美しい絵のような場面だった。

映画に使われるリンガラ音楽と対照的に、キンバンギスト交響楽団の演奏するクラシック音楽も効果的に使われている。
この交響楽団は、映画「キンシャサ・シンフォニー」(ドイツ・2010年)で団員の日常生活が描かれたことで世界的に知られるようになった。キリスト教系の教会に属する、サハラ以南のアフリカで唯一のアマチュア交響楽団だ。

「幸福」という名を持つ主人公は、どのように自身の幸福にたどり着くのか。

邦題 「わたしは、フェリシテ」

東京では、12月16日から、渋谷と有楽町で上映予定だそうだ。
この映画は、2017年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を取っている。

監督に、どうしてこの映画の舞台が ”キンシャサ” でなければならなかったのかと問うたとき、「キンシャサには音楽があるから。」と答えたと聞く。



2017年10月4日水曜日

キンシャサ便りよもやま話2 コンゴ週間 in 新宿


先月9月23日から今月1日までの9日間、新宿丸井1階のイベントスペースで、慶応藤沢湘南の長谷部葉子先生の研究会主催で、第1回の「コンゴ週間」が開かれた。

これは、キンシャサの外れで、シングルマザー自立を目指して運営される職業訓練学校の洋裁教室で技能を身に着けた女性たちが制作したエプロン、ブラウス、バッグやポーチ、クロスなどを商品として日本に持ち込み、販売し、彼女たちの現金収入を目指して、また学校運営の活動支援のために開催された商品ブースだった。

その職業訓練学校と、そしてまた学校に通うことの困難な児童たちのための初等教育の学校を運営するコンゴ人女性のママセシールが、今秋から医師として勤務が始まる息子さんを伴って私費で来日。連日、店内で接客をして交流し、また日本での商品展開事情の視察を兼ねた来日だった。本当に、ダイナミックな女性だ。

丸井で、”店”として企画展開することから、六百数十点を、長谷部葉子先生とママセシールの厳しい目で点検して商品管理をし、今夏、コンゴに滞在した慶応の学生たちなど関係者が日本まで運んできた商品だった。
もちろん、アフリカのカラフルで大胆な元気いっぱいのプリント地を使っての商品だ。

店内の飾りつけも慶応の学生たちのアイディアで制作された作品や、ティンガティンガのペンキ画のSHOGENさんの作品で色鮮やかなスペースが出現した。






わたしたち青猫書房は、アフリカを舞台にした絵本、物語、随筆、写真集など27点を店内で展示して来場者に紹介し楽しんでもらい、アフリカへの視点を多角的に持ってもらう、という役目ができたのではないかと自負する。また、選書27点を紹介するために、コメントを載せたリーフを作成して店内に置き、選書に興味を持たれた来場者にコメントリーフを持って行っていただいたことも嬉しいことだった。

SHOGENさんのペンキ壁画も2点、会場でライブで描かれ、多くの方が足を止めて見入っていた。


また、開催期間中、丸井屋上で、コンゴ出身の打楽器奏者が中心になって、アフリカンリズムを作り出すワークショップなどもあり、賑わっていた。

今回は、ママセシールの学校運営の日本での支援バザーの第1回目だった。
慶応藤沢湘南の長谷部葉子先生のゼミも、キンシャサで現地の子どものための学校運営と大学構内で開講される日本語クラスの活動が10年続いて、すばらしい架け橋を作ってきている。その活動を通して出会った、コンゴ女性、ママセシールの職業訓練学校と初等教育学校運営の活動。彼女の、その活動を、長谷部葉子先生とゼミ生が支援しようと東京で企画された、「コンゴ週間」だった。
本当にすばらしい企画だった。

来年もまた、ぜひ何らかの形で手伝いができたらと思う。
これからも、ずっとずっとこのような草の根のコンゴとの繋がりが続きますように。